「肩甲骨の動かし方が分かりません」から始めた50代女性の話

坊主の本音

「肩甲骨を寄せてみてください」

そう言われて、
すぐに動かせるでしょうか。

実は、
これができない方は珍しくありません。

意志が弱いからでも、
体が硬いからでもありません。
その部位を、脳が
自分の体として認識していない
のです。

今日は、そういう状態から
始めた方の話をします。
ご本人の許可をいただいています。

「肩甲骨の動かし方が分かりません」

50代の女性です。

首のヘルニアと診断され、
医師から「運動不足が原因なので、
とにかく体を動かしなさい」と
言われて来られました。

ご自身では何をすればいいか
分からなかったそうです。

背中のトレーニングで
「肩甲骨をこう動かしてみてください」
とお伝えしたところ、
返ってきた言葉がこれでした。

「肩甲骨の動かし方が分かりません」

骨盤を動かす感覚もない。
お腹に力を入れる感覚もない。
そういう状態でした。

知覚できる場所だけに力が入る

興味深いのは、
体が動かなかったわけではない
ということです。

動かそうとすると、
自分で感じ取れる部分——
この方の場合は首まわりに
力みが出ていました。

脳が把握していない部位は
使えないので、
把握できている場所で
代わりに動かそうとする。
そういう仕組みです。

ご本人は、それが普通だと思っていました

運動経験がまったくなかったので、
できないことに
戸惑ってはいませんでした。

「こういうものだ」という
受け止め方だったと思います。

ここが大事なところです。
気づいていないだけで、
同じ状態の方はかなりいます。

体で起きていたこと

この方は胸から腰にかけての背骨が
かなり固まっていました。

そこが動かないぶん、
日常の動作で首に負担が集中します。
首のヘルニアは、
その積み重ねだったと考えられます。

下半身も同じでした。

お尻やももの裏がうまく使えず、
別の筋肉が代わりに働き続けた結果、
股関節まわりに
慢性的なだるさがありました。

痛みが出ている場所と、
原因のある場所が違う。
よくあることです。

4ヶ月、うまくいきませんでした

正直にお伝えします。

最初の4ヶ月ほどは、
狙った筋肉を使えない期間が
続きました。

背中を引く種目で
肩甲骨を寄せてもらおうとしても、
首や肩の前側がきついと
言われる。

別の種目でも、
肩の上や腕ばかりが
働いてしまう。

細かく促しても、
体は今までのやり方を
選んでしまいます。

それでも続けられた理由

この期間、
ご本人に手応えはなかったはずです。

それでも続けてくださったのは、
自分の体の感覚がないことに
気づかれたからだと思います。

今まで普通だと思っていた。
でも、このままではいけない。

そういう危機感が
支えになっていたように感じます。

私が伝え続けたこと

変化を感じられない時期こそ、
外から見えている変化を
言葉にして返すようにしていました。

「ご自身ではまだ
分かりづらいかもしれませんが、
確実に肩甲骨が動いています」

「骨盤の前後の傾きが、
以前は難しそうでしたが、
今は意図的に動かせていますね」

「前はしゃがむと背中が丸まって
いましたが、今日は背筋が伸びたまま
しゃがめていました」

本人に見えない変化を、
隣で見ている人間が伝える。
この時期にできるのは、
それくらいです。

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「ここら辺です」

感覚が育ってきたと分かる
瞬間があります。

種目の後に
「今どこが一番疲れていますか」と
聞いたときです。

あるとき、
狙っていた筋肉のあたりを触って
「ここら辺」と答えられました。

「そうです、そこで合っています!」

そう返したとき、
ご本人も嬉しそうにされていました。

私にとっても、
とても嬉しい瞬間でした。

10ヶ月後

現在、この方は
バーベルを使ったスクワットや
ベンチプレスにも取り組んでいます。

しかも、適切な筋肉を使って
動作できています。

正直に言うと、
ここまでは想定していませんでした。

毎回のセッションで
できることを積み重ねていくうちに、
「あ、これはいけるかもしれない」と
思う段階が来ただけです。

体の痛みも、
今は感じなくなったと
おっしゃっています。

今、挑戦していること

お腹の感覚もまったくない方でした。
「自分に腹筋があるのかどうか
分からない」と言われるほどです。

負担の少ない動きから
根気強く続けていたところ、
お腹に筋肉痛が出るようになりました。
そこではじめて、
腹筋の存在を知覚されました。

そして今、
クランチ(仰向けから上体を起こす動作)に
挑戦されています。

人生で一度もできたことがない、
とのことでした。

みんなができていた動作が
自分にはできなかった。
その記憶が、
今できるようになりたいという
気持ちに変わっているのだと思います。

そしてもうひとつ。

体を適切に使えるようになった分、
運動の強度が上がり、
お腹まわりが細くなりました。

美容院で「痩せた?」と言われたことを、
嬉しそうに話してくださいました。

目指しているのは、認識できる体です

この方に行ってきたことは、
ひとことで言えばこうなります。

自分の体のパーツを、
自分の体だと認識して動かす。

「なんとなく体が動いている」
という状態から、
この動きにはこの部分を使う、と
判断できるようになること。

それができるようになると、
日常の動作でも
負担が特定の場所に
集中しにくくなります。

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心当たりのある方へ

肩甲骨が動かせない。
お腹に力が入る感覚が分からない。
どこに効いているか分からない。

それは、
運動に向いていないということでは
ありません。

スタート地点が
そこだというだけです。

そして、時間はかかりますが
変わっていきます。
50代からでも変わります。

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※この方は医師の指示のもとで
運動に取り組まれています。
痛みや診断のある方は、
必ず医療機関にご相談ください。
この記事は診断や治療に
代わるものではありません。

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